fc2ブログ

MY臨床発達心理学

SCERTSモデル

 ←コンピテンス →日本臨床発達心理士会全国大会
臨床発達心理士会の国際ワークショップ「SCERTSモデル」が終了しました。

SCERTSモデルは次世代の自閉症支援といわれており、有資格者限定のワークショップには初日145名の申込者全員が出席、3日目の公開講座には、300名以上の参加者が集まるという結果からも、その関心の高さが伺えます。

今回の国際研修を企画されたのは、筑波大学の長崎勤先生を中心とする研究グループで、この時期にあわせてマニュアルを翻訳され、日本文化科学社からは「SCERTSモデル第1巻」が同日出版されています。




SCERTSモデルは、これまでの自閉症教育・療育の結果を総括し、自閉症研究や発達心理学の知見などによるエビデンスをもとに、以下の3つの視点を中心に、より包括的な支援をめざすフレームワークを示したものです。

 SC(Social Communiction)社会コミュニケーション
 ER(Emotional Regulation)情動調整
 TS(Transactional Support)交流型支援(家族中心・専門家連携による支援)

この3つの頭文字をとってSCERTS(サーツ)と呼ばれます。

SCERTSモデルは自閉症に関する様々な療法を柔軟に取り入れ、決して排他的なものではない、ということを第一著者で今回の講師のプリザント先生は何度も繰り返されていました。

自閉症支援の方法として日本でも良く知られているTEACCHやABA,RDIなどとどこが違うのか、という質問がなされていましたが、SCERTSモデルは自閉症にとって良い効果を示すものは柔軟に取り入れているようです。

それは、自閉症に関する多くの研究論文を総合的に研究した結果、導き出された事実「一つの療法だけが他の療法よりも優れているという科学的な証拠は見つからない」をもとに、「さまざまな対象者に対してさまざまな方法を柔軟に用いていくこと」を理念に据えているからです。

この理念のもとに、自閉症児・者にとって、最優先課題である「社会的コミュニケーション」と「情動調整」に焦点を当て、さまざまな専門家が専門的な視点から様々な支援方法を考え、保護者や本人と「連携」して支援をしていきます。

連携の具体的な方法として、家庭や学校などの慣れた場面で慣れた人とかかわる場目や、はじめて会う人とのやりとりの場面など、複数の場面を家族や専門家を交えて観察し、チームで話し合いをしながらアセスメントをしていきます。
チームでの話し合いの中で、家族の価値観はもっとも尊重されますので、同じような発達状況のお子さんでも、異なる目標や異なる方法が選ばれることもあります。また、支援メンバーの質(メンバー構成や専門性の高さ)が支援内容と結果を大きく左右することになります。

たとえば、音声言語のない重度の自閉症児に対しては、社会コミュニケーションの最優先課題として、他者と関心を共有すること(共同注意)や、身振りサインや写真カードなどを使って(シンボル使用)意思を自発的に伝えることなどが目標として考えられます。この目標を達成するためには、非常に細かいステップが必要ですので、STなどのコミュニケーションの専門家との連携ですすめていくことが求められます。

また、情動調整については、不安なときにタオルを口に入れるなどの自己調整や、母親に体をしっかりと保持してもらうというような相互調整をすることなどが考えられますが、そのアセスメントや支援にはOTや感覚統合的な視点が必要です。

3日間のワークショップの最終日には、日本での研究事例が紹介されました。翻訳を進めながらの試みであったとのことで、大変な作業であったことと思います。
その実践を振り返り、支援チームにSTやOTなどの他の職種が含まれていなかったことへの反省が聞かれましたが、SCERTSモデルの本格的導入のためには、専門家連携のシステムのが必須であることを実感しました。

支援制度が違うので一部だけ取り入れる、という方法もあるかもしれませんが、そのことが固定化してしまうと、誤解を招きかねません。SCERTSモデルは、自己の専門性研鑽に対する厳しい姿勢と日本の特別支援教育や支援制度に対する幅広い見識という大きな課題を私たちに突きつけてくれました。



2日目のプリザントさんを囲む会で。
むちゃくちゃな英語でお礼のことばをお伝えしましたが、優しい笑顔で聞いていただきました。







  • 【コンピテンス】へ
  • 【日本臨床発達心理士会全国大会】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【コンピテンス】へ
  • 【日本臨床発達心理士会全国大会】へ